補助金の申請から交付までの事務を幾度となくやってくると、こういう方は申請しない方がいいのではと明らかに思えてしまう方がいらっしゃいます。申請しても、その姿勢では採択の優先度は下がったり、仮に運よく補助金の採択を受けることができても、その後何かとトラブルが起きたりするということがありました。
それらを思い起こしながら、こういう方は補助金の申請を辞めておいた方がいいという、私の考えを記します。参考になれば幸いです。
(1)補助金がもらえなければ、プロジェクトそのものをやらないと考えている
こんな本末転倒なことを考えるわけはないだろうと考えるのが当然のように思えますが、筆者のお付き合いした申請者には、意外とこう考えている方が多かったです。
しかし、申請しようとしている事業者が補助金をもらってやろうとしていることは、事業者が事業を拡大したり、新たな事業を行いたい、工場を増設したい、販路を拡大したい、そのための資金の一部に公的資金を使うということです。
事業を実施する責任は事業者にあります。したがって、補助金がないならやりませんと言ってしまうと事業者の事業に向き合う姿勢を疑われてしまいます。
行政などの支援機関が補助金を出すのは、短期的にか長期的にかは別にしても、それが雇用の創出につながるなど、経済的な効果が見込まれるからです。そのための審査基準を設けて評価をしますが、その中で事業実施を確実に進める姿勢があるどうかは、重要なポイントです。
特に、補助金によっては、審査会でのプレゼンテーションを求められ、上記の項目を質問されることもありますが、せめて、自己資金の範囲でできることを着実に進めたいと言わないと、大きく評価がは下がってしまうでしょう。
(2)本業そのものが忙しく、自社のスタッフで書類を書いている暇がない
おそらく、中小企業者の大半はこの項目に該当するのではないかと思えるほど、こういった事業者にはよく出会いました。とても魅力的な事業計画を持っていながら、マンパワーが足りないという状況です。このような状況で無理をしてしまうと、本業に差し障るという本末転倒な結果に陥ってしまうので、極めて重要です。
ただしこの点に関しては、自社での書類作成にこだわるのであれば、申請は難しいですねという話で終わってしまうのですが、補助金申請に当たって事業者にとって最も負担になる各々の書類作成を士業などの専門家等の外部に依頼して、自社の負担を減らす方法があります。
(3)事業に、事情のよくわかっていない人に口出しされたくないと考えている
いわゆるワンマンと言われる方が社長をしている事業者に多い印象がありました。基本的に、自己資金以外の資金を活用しようとすれば、補助金にしても融資にしてもその申請先からは何らかの口出しをされることは覚悟すべきでしょう。ましてや返済不要の補助金や助成金ならなおさらです。
ただし、行政等の支援機関として十分な情報を持っていないのに、理不尽な助言をする担当者もたまにいます。そういった場合事業者は、餅屋は餅屋ですから補助目的に沿ってこっちのやり方でやりますと回答すればいいです。
誤解を招かないように行政等の支援機関にも、説明責任があるとも感じています。
冒頭に挙げたような方でも、相談に来られる方はいます。私の経験した事例では、説明された事業内容が補助目的に合致していたので、申請してもらえ採択したこともありました。しかし、その後に必要な書類の作成をお願いしても、なかなか相手にしてもらえず、事業内容を勝手に変更しても、必要な手続きを取ろうとせず苦慮したことがありました。
今思えば、きちんと申請前の段階で、丁寧に制度の説明をくどいほどした上で、それでも利用したいならご申請を、と言えばよかったと反省しています。
※自著より引用修正して掲載しました。