補助金の基本的な考え方として、補助金を充てたプロジェクトで買ったものは、その補助目的のために使わなければならないというのが、大前提としてあります。
ただ、新事業のための試作を行うために補助金を用いて購入した機械設備を、実際に販売する商品の製造に用いていいか、という問い合わせはよくいただきます。
その補助金の交付要綱の内容によるよりますが、試作経費として補助しているのであれば、結論から言うと、実際に販売する商品の製造に用いることは原則認められません。
認められるとすれば、予め補助元の承認をもらい、場合によっては補助金の一部を返還する必要があることもあります。
理由は、次に2点です。
(1)補助目的が、新商品開発であって、売り上げを上げる事業そのもに対する補助ではないこと。
(2)仮に補助元のお承認を得ないで、補助金を充てて購入した加工機械を使って作った商品を売って利益を上げたということであれば、補助事業の目的(条件)に反するとして最悪、補助金の全額返納を求められる可能性もあること。
具体的には、次のような例です。
例えば新たな食品開発のために試作のための加工機械を補助金を充てて購入した場合です。もし、試作がうまくいき、商品化できたが、まだ売り上げが大きくならないうちは製造ロットも少ないので、試作のために使った機械を使って商品を作って売ってもいいか、という相談があります。
一見よさそうに見えるし、私自身も心苦しかったのですが、先に挙げた理由から、その機械で商品を作って売ってはいけません、と答えざるを得ませんでした。
事業者の方にとっては、納得いかない部分があったと思いますが、私の対応した場合はその都度一応了解してはいただいてました。
ただ知恵者はいるもので、加工機械をリースして、補助事業期間中は、そのリース料を補助対象経費として計上して補助金をもらい、補助事業期間の終了後は、全額自社でリース料を負担し、そのまま加工機械を使うという方法で、乗り越えたという話を後日聞きました。
確かにそれであれば、多少もらえる補助金の金額は減りますが、問題ないと思えます。ただ最近それも認めないとしている補助金もあるようで、注意が必要です。
なお、例えば厚生労働省が所管している雇用関係の助成金の多くは、事業で雇用を確保するために助成しているので、実際の事業の経費に充てても基本的には問題は生じません。
また、都道府県や市町村が行っているや工場の新増設に関する経費とする補助金も、使用する機械設備などの購入資金にに充てれば問題は生じません。
※この投稿は、自著を加筆修正して掲載しました。